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活動情報

2020.11.05

コロナ禍においても安心、安全な選挙を実施するため、オンライン投票の導入に向けた実務検討の早期開始を要望します

日本IT団体連盟
理事会

 新型コロナウイルス禍の克服に向け官民一体となり取組を進める中で、新型コロナウイルスの陽性者やその濃厚接触者が隔離状態に置かれることにより、国民が政治に参与する仕組の根幹である選挙において、自ら投票所に赴いて投票することが著しく困難又は不可能な状況が生じている。これは、日本国憲法において国民に保障された最も根本的な権利である選挙権の行使が阻害されている状況に外ならず、民主主義の危機とも謂うべき事態である。日本IT団体連盟は、我が国が誇るIT技術の活用により、この未曽有の危機を乗り越えるべく、隔離者が安全かつ確実に投票するためのオンライン投票の導入に向けた早期の実務的検討の開始を要望する。

 従前より、病気等の理由により投票所に赴くことが困難な者に対しては、郵便等における投票や病院等における投票等により、可能な限り選挙権を行使できるよう制度の整備及び運用が図られているところである。しかし、今般、いつ何時濃厚接触者となり、又、検査の結果陽性者となり隔離状態におかれるかは予測不可能であり、投票日直前に斯かる状況が生じる可能性を誰しもが持っている。手続に要する期間や、感染症患者が自書した投票用紙を送付・開票することのリスクを鑑みると、従前より整備・運用されてきた手続では、国民の投票する権利を実態的に保障することは困難であると言わざるを得ない。

 IT技術を活用した投票においても、選挙において保障されるべき投票の平等性、秘密性、自主性、事後検証可能性等は、現行制度と同等以上の水準を確保することが可能であり、民主主義の根幹である選挙制度及び結果に対する国民の信頼も確保されると考えている。

 折しも、新型コロナウイルス対策を通じた権威主義の更なる台頭が懸念される一方で、民主主義国家においては選挙の延期等の事態が生じている。新型コロナウイルス対策と公正な選挙の両立は、民主主義を堅持し、公正かつ自由な社会を守るために必要不可欠な取組である。IT技術を活用した、新型コロナウイルス禍においても着実に選挙を実施出来る体制の確立は、我が国のみならず国際的にも極めて重要な意義を有するものであり、政府において、早期に実務的検討を開始されることを重ねて要望する。

別記 

1.オンライン投票の対象範囲

「投票当日投票所投票主義」を前提に、オンライン投票は、新型コロナウイルス陽性者及び濃厚接触者に対する特例として、現行制度における郵便等投票と同様に不在者投票の一環として実施する。現行制度との親和性を最大限確保することで、新たな投票方式の導入による現場の混乱を回避し、選挙実務者の負担を最小限度に留めることが可能となると考えている。
 オンライン投票に使用するIT機器を選挙人自らが操作することを想定し、誰しもが容易に理解し操作可能であり、かつセキュリティ対策が万全に施された機器及びUIの指定又は提供が不可欠である。 

2.セキュリティならびに秘密投票の確保

投票の平等性、秘密性、自主性及び事後検証可能性の確保、票及び開票結果の改竄の防止のため、万全のセキュリティ対策及びシステム設計が不可欠である。その実現のため、顔認証等を用いた本人確認の徹底、IT機器のカメラを用いた振る舞い判定により他者からの強要ではない旨を判定する、二重鍵を用いた暗号化により匿名性を確保する、分散台帳管理により改竄を防止する等の対策を施すことが考えられる。

 3.地方自治体等、選挙及び感染症対策への配慮

新型コロナウイルス対策としてのオンライン投票導入に際し、選挙実務や医療の現場に無用の混乱や過度な負担増が生じることは避けるべきである。上述の課題をはじめ、検討すべき論点の多くは「投票環境の向上方策等に関する研究会(総務省)」等の場で公かつ活発に議論されており、これらの検討結果を活用することで、既存の制度・運用をシームレスに応用及び拡張することが可能となる。その結果、斯かる現場の懸念を払拭すると同時に、選挙結果が公平公正なものとして引き続き国民の信頼を得られると考えている。

 日本IT団体連盟は、515日「withコロナ時代を見据えたデジタル化・オンライン化推進のための政策提言」を表明し、国民の生活基盤のオンライン化の推進を要望してきた。
 新型コロナウイルス禍において、国民が一致団結して日本の未来を切り開いていくため、私どもIT事業者は、技術・サービスの両面で、本件に全面的に協力する所存である。

以上

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